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丸大豆と脱脂加工大豆の違いとは?醤油の原料を製造工程・栄養・科学的視点でやさしく解説

しょうゆの原材料表示でよく見る「丸大豆」と「脱脂加工大豆」の違いを、製造工程・発酵期間・栄養・コスト・ヘキサン抽出の安全性まで、科学的に解説します。

はる//読了 約6分

この記事のポイント

  • 丸大豆は「大豆まるごと」、脱脂加工大豆は「油を抜いた残渣」
  • 発酵期間は丸大豆6〜8ヶ月、脱脂加工大豆2〜3ヶ月で約2倍の差
  • 栄養成分(タンパク質)はほぼ同じ、油由来の風味成分が違う
  • ヘキサン抽出は科学的に安全と評価されている
  • 「無添加生活を始める」なら丸大豆、コスト重視なら脱脂加工大豆

原材料表示でよく見る2つの大豆

醤油や味噌、豆腐の原材料を見ていると、「大豆」の表示にも何種類かあることに気づきます。

  • 大豆(丸大豆)
  • 脱脂加工大豆
  • 大豆たんぱく
  • 分離大豆たんぱく

なかでも醤油の原料として最もよく見るのが、「丸大豆」「脱脂加工大豆」の2つ。

なんとなく「丸大豆の方が良さそう」と感じる方もいるかもしれません。実際には、何がどう違うのでしょうか。製造工程・発酵期間・栄養成分・ヘキサン抽出の安全性まで、科学的にやさしく解説していきます。

1丸大豆とは:大豆をまるごと使う

「丸大豆」とは、その名のとおり大豆をまるごと使うことを指します。皮をむいたり油を抜いたりせず、収穫したままの形で発酵に使う方法です。

丸大豆には、タンパク質約34%・脂質約20%・炭水化物約28%(日本食品標準成分表 八訂より、国産大豆・乾の値)が含まれます。脂質(油分)が多いのが特徴で、この油分が長期発酵中にゆっくり分解されることで、コクのある風味成分の前駆体になります。

そのため丸大豆を使った醤油や味噌は、6〜8ヶ月以上の長期発酵が一般的です。手間とコストはかかりますが、深い味わいが生まれます。

丸大豆=伝統的な原料

実は江戸時代から第二次大戦前まで、日本の醤油・味噌の原料はほぼすべて丸大豆でした。「丸大豆を使う」というのは、長い歴史の中で培われた、もっとも自然な醤油づくりのスタイル。私たちが「丸大豆を選ぶ」というのは、伝統的な発酵食文化に立ち返る選択でもあります。

2脱脂加工大豆とは:油を絞った残渣

一方の「脱脂加工大豆」は、サラダ油などの食用油を製造する過程で、大豆から油分を抽出した残り(絞りかす)を加工して再利用したものです。

油を抜く方法には2つあります:

抽出方法内容
圧搾法機械で物理的に油を絞る(古来の方法)
ヘキサン抽出法ノルマルヘキサンという溶剤で油を溶かして抽出(現在の主流)

現代の食用油生産では、効率の良いヘキサン抽出法が主流です。脱脂加工大豆の多くも、このヘキサン抽出後の絞りかすが使われます。

脱脂加工大豆は油分が抜かれているため、発酵期間を2〜3ヶ月と短くできるのが大きな特徴。生産コストも大幅に下がるため、日本で流通する醤油の約8割は脱脂加工大豆を原料に使用していると言われています(日本醤油協会の発表値)。

なぜ脱脂加工大豆が主流になったのか

脱脂加工大豆が日本の醤油業界で主流になったのは、第二次世界大戦後の高度経済成長期です。当時、食生活の洋風化で食用油の需要が急増し、大豆から効率的に油を絞る工業的な手法が確立されました。その「副産物」として大量に発生する脱脂大豆を、醤油原料として有効活用する流れが生まれたのです。

発酵期間を半分以下に短縮できるため、量産・低価格化に大きく貢献しました。スーパーで安価な醤油が当たり前に手に入る現在の状況は、この技術革新の結果でもあります。歴史的な背景を知ると、「丸大豆 vs 脱脂加工大豆」は単なる原料比較を超えた、食文化の選択でもあると感じられます。

34つの視点で徹底比較

比較項目丸大豆脱脂加工大豆
発酵期間6〜8ヶ月2〜3ヶ月
タンパク質約34%約50%(油分が抜けて濃縮)
脂質(油分)約20%1%未満
風味コク・まろやか・余韻あっさり・キレ重視
生産コスト高い低い(量産向き)

注目したい違い:油分が「コク」を生む

タンパク質含有量はむしろ脱脂加工大豆の方が高くなります(油分が抜けて濃縮されるため)。「栄養面」だけ見ると大きな差はありません。

違いが顕著に出るのは「風味」の領域です。丸大豆の場合、6〜8ヶ月の発酵期間中に油分が酵素で分解され、脂肪酸とグリセリンに変化。これらが乳酸菌や酵母による発酵プロセスでさらに変化し、コクのある独特の風味成分を生み出します。短時間発酵の脱脂加工大豆では、この「油分由来の旨味」がほとんど出ません。

4ヘキサン抽出は本当に安全?

脱脂加工大豆のヘキサン抽出について「危険」と書かれているネット記事もあります。実際のところ、科学的にはどう評価されているのでしょうか。

ヘキサンとは

ノルマルヘキサンは石油由来の有機溶剤で、油脂を溶かす性質があります。食用油の抽出効率が非常に高いため、世界中で食用油生産に使われています。

日本での扱い

日本ではノルマルヘキサンは食品衛生法で「食品添加物(抽出溶剤)」として認められた成分で、食品添加物公定書に使用基準が明記されています。製造工程で完全に蒸発・除去することが義務付けられており、最終製品への残存量はごく微量に管理されています。

国際的な評価

WHO(世界保健機関)とFAO(国連食糧農業機関)の合同食品添加物専門家委員会(JECFA)でも、抽出溶剤としてのヘキサンの安全性が評価されています。「適切に管理された製造工程であれば、人体への影響は無視できるレベル」というのが国際的なコンセンサスです。

つまり「ヘキサン抽出=危険」は科学的根拠に乏しい主張です。ただし、加工工程がよりシンプルなものを選びたいという「気持ち」は、消費者として自然なものです。「絶対の安全」より「自分の納得感」を優先する選び方も、立派な選択。

5どちらを選ぶ?判断軸

Choose 丸大豆

  • 無添加生活を始めたばかりの方
  • 料理にコクや深みを求める方
  • 原料の透明性を大事にしたい方

Choose 脱脂加工大豆

  • コストを抑えたい方
  • あっさりとしたキレのある味が好みの方
  • 毎日大量に消費する家庭

化学物質過敏症の妻と暮らす私たちは、丸大豆を選んでいます。理由は「料理の味の決まりやすさ」と「原料がシンプルで自分も納得できる」こと。脱脂加工大豆を否定するわけではありませんが、毎日使う調味料こそ、自分の納得感を優先したいというのが正直なところです。

また、丸大豆を選ぶことが結果的に長期発酵・国産・有機といった「より良い醤油」を選ぶことにつながりやすい、というのも丸大豆を推す理由のひとつです。原材料表示を見るとき、まず「丸大豆」の文字を探すクセをつけるだけでも、無添加生活への大きな一歩になります。

国産大豆 vs 輸入大豆という観点も

丸大豆か脱脂加工大豆かに加えて、もうひとつ意識したい観点が「大豆の産地」です。農林水産省の統計によると、日本の大豆の自給率は約7%にとどまり、約93%が輸入。輸入元はアメリカ・ブラジル・カナダなど、遺伝子組換え大豆の主要生産国です。

日本では消費者庁の食品表示基準により、大豆および主な大豆加工品については「遺伝子組換えでない」「分別生産流通管理済み」の任意表示が可能です。2023年4月の制度改正により、「遺伝子組換えでない」と表示するには混入率0%(不検出)であることが条件となり、表示の基準はより厳格になりました。

ただし、醤油や味噌のように加工度が高い食品では、組換えDNAが製造工程で分解されるため、表示義務の対象外となるケースが多いのが実情です。原料の透明性を求める方は、メーカー公式の問い合わせや「遺伝子組換えでない」表示・「国産大豆使用」表示・有機JAS認証マークなどを手がかりに選びましょう。

実際、丸大豆を使ったプレミアム醤油の多くは、国産大豆や有機認証大豆を採用していることが多く、「丸大豆を選ぶ」と自然に「原料の透明性が高い醤油を選ぶ」ことに繋がる、とも言えます。

6. まとめ

  • 丸大豆=大豆まるごと、脱脂加工大豆=油を抜いた残渣
  • 丸大豆は発酵期間6〜8ヶ月、脱脂加工大豆は2〜3ヶ月
  • 栄養成分(タンパク質)はほぼ同じ、油分由来の風味が違う
  • ヘキサン抽出は科学的に安全と国際的に評価されている
  • 「コクのある味」「原料の透明性」を求めるなら丸大豆がおすすめ

「無添加生活を始めたい」と思ったら、まずは丸大豆を使った醤油・味噌を1本試してみるのがおすすめです。具体的なおすすめ商品については、「無添加丸大豆しょうゆの選び方」をご覧ください。

📚参考文献・出典

本記事は以下の公的機関・学術団体の情報をもとに執筆しています。

  1. 日本食品標準成分表(八訂)増補2023年
    文部科学省 — 大豆および大豆加工品の栄養成分データ
  2. 食品衛生法施行規則および食品添加物公定書
    厚生労働省 — ノルマルヘキサンの抽出溶剤としての使用基準・最終製品中の残存量基準
  3. 食品添加物の安全性評価(JECFA)
    WHO/FAO Joint Expert Committee on Food Additives — 抽出溶剤の毒性評価
  4. 日本農林規格(JAS):しょうゆの品質に関する表示基準
    農林水産省 — 原材料表示の規定
  5. 醤油の生産統計
    日本醤油協会 — 国内醤油原料の使用比率に関する報告
  6. 大豆をめぐる事情
    農林水産省 — 国内大豆の自給率・輸入量に関する統計

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